空白の天気図 柳田邦男著  読後感 2017初夏


2017年6月18日(日)

先日(6月7日)の、日経夕刊16面 文化欄
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「ノンフィクションの風景(1)」に取り上げられた 「空白の天気図」
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一週間超をかけて、やっとやっと先ほど読了。

重かった。


この世界の片隅に」は、戦争末期前後の主に呉市を描いたものでしたが、
この本の内容は、8月6日に原爆を落とされ、人員やインフラ(電気・電話)を失い、そして
8月15日に終戦を迎えた広島管区気象台(広島市呉市)が、9月17日に、後に「枕崎台風」と命名される
超大型の台風を迎えるというもの。


超大型台風の接近を、中央からの全国宛の気象通信で知りえるも、インフラを失って外部(中央、東京)や、
広島市呉市周辺地域に伝える手段が一切ない中で、孤立無援状態に置かれた
広島管区気象台がどのように考え、行動し、観測を続け、記録したか、そしてなすすべもなく
多くの市民が台風に襲われ、破壊されゆく街の有り様を、克明に記しています。

枕崎台風広島県下での死者及び行方不明者は2,012人。
台風上陸地の九州地方全体の犠牲者数は442人。
いったいなぜ、広島県だけで九州全体よりもはるかに多くの命が失われなければならなかったのか。

久しぶりに重く考えさせられる本でした。
同時に、気概というか気骨というか、使命を持った人間(昔はみんな持っていたと思う)の
凄みというものを感じました。


誰にでも気軽に勧められる本ではないです。
図太い、骨のあるノンフィクションです。
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